ショートインプラントとは
―ショートインプラントとは?その概念―
短くても良いのになぜわざわざリスクを高めてまで長いインプラントを入れる?
インプラント治療は世界的に標準な治療法となりました。しかし日本ではまだまだできるだけ長いインプラントを埋入する傾向があります。なぜでしょうか。
近代インプラントが始まった西洋の骨格の良い白人社会ではそれで良かったのですが、骨格の貧弱な東洋人にはそれは解剖学的にリスクが高く、また必要以上に骨造成をしなければならなくなります。患者さんにとっては経済的にも身体的にも辛い訳です。
白人のような骨格(骨量、骨質)が良い人種ならともかく東洋人のような骨格が貧弱な人種にそれが良いとはとても私には思えません。
ショートインプラントは通常のインプラントよりも短いため、欧米人に比べて骨量(顎骨の高さや厚み)が少ない日本人にも合い、より安全に負担を軽減して治療を行なうことができます。
インプラントは顎骨に埋め込むものなので、力を入れて思いきり噛めるというメリットがあります。しかし、噛む力の大きさや噛むときの癖などによって過剰な負担がかかり、まれに折れたり抜けたりしてしまうことがあります。
ショートインプラントは、通常の長いインプラントに比べて力が分散しやすいので、折れたり抜けたりしにくくなっています。メンテナンスを継続的に受け、良好な状態を維持できていれば長期間不具合なく使えます。
日本で施術されているインプラントは長すぎます
現在までインプラント治療の進歩は顕著なのに、欧米人向けの長いインプラントをわざわざリスクを高めてまで埋入する必要があるのでしょうか。逆に言えば短いインプラントで十分長期で機能するのになんでわざわざリスクを犯すのでしょうか。
現状の日本では欧米人向けのインプラントを骨格の脆弱な東洋人にどうしたら入れられるか?という、特にヨーロッパ系のインプラントメーカー主導のセミナーを真に受けている先生方が多くいます。学会もしかりです。
日本では多くの歯科医院でこれらの欧米製インプラントを一流インプラントと思い込んで使っています。しかし欧米人に比べて顎の小さい日本人には、じつは合わないことが多いのです。
これらを使っている日本の歯科医師のなかに、「欧米人向けに作られたインプラントが、日本人に合うのだろうか…?」と考えたことのある人はどれくらいいるでしょう。
事実、「このメーカーのインプラントだから間違いない」と疑いもせずに使う歯科医師が多く、ホームページでも一流メーカーのインプラントを使用していますと宣伝しているのも多く見かけます。
人の身体に埋め込むのに一流じゃないメーカー、インプラントシステムがあるのでしょうか? 全てが世界で最も厳しい日本の薬事法をクリアしてるはずです。つまりその患者さんに合うサイズかどうかが重要なのです。
もちろん欧米製のインプラントもいいのですが日本人にとっていいのだろうか…?」とその良し悪しが吟味されることは、ほとんどないでしょう。
それを踏まえ、あらためて「自分の体内に使われるものが、自分向けではなかったら…」と考えてみてください。「自分の口にきちんと合うものを使ってほしい」と思いませんか?
通常のインプラントとショートインプラントの比較
「ショートインプラント」とは、一般的なインプラントよりも短いインプラントを指します。一般的なインプラントは長さが10mm以上ですが、ショートインプラントは6mm程度しかありません。
インプラントは世界中で使われており、メーカーも多数あります。そのなかでも、ノーベルバイオケア、アストラテック、
ストローマン、カムログなど欧米のインプラントは、主に欧米で採用され大きなシェアを占めています。
なお、当院でも欧米製のインプラントも多種取り扱いますが、それは「有名なメーカーのものだから」ではありません。その患者さんに合うと思えば選択します。
そもそも我々歯科医はインプラントを売っている訳でなく、診断を含む技術と知識と熱意を売っているはずです。
なぜショートインプラントを使うべきなのか。それを選択するメリット
松村歯科クリニックでは、2008年から先駆的に日本人の骨格に合うインプラントサイズを模索し各学会にも症例を多く発表し、メーカーにもたくさんの長期症例のデータを提供してきました。
日本口腔インプラント学会においては長さ8mm以下のインプラントをショートインプラントとして昨今定義もなされました。やっとです。
当院では患者さんへのリスクや侵襲を抑えるために長径5mmのインプラントを選択する場合もあります。
一般的に、インプラントを埋め込むには、骨の高さや厚みが十分に足りている必要があります。骨が足りないと、インプラントが上顎洞(鼻の両脇にある空洞)に突き抜けたり、下顎の神経に近接して麻痺が出てしまうリスクがあります。
このような事態を避けるため、骨が足りない方にインプラントを埋め込むときは、人工骨を移植するなどして骨を増やす「骨造成」を行ないます。そのため通常のインプラント治療よりも大がかりになり、患者さんにとって身体的・経済的負担が大きくなります。
しかしショートインプラントであれば、上顎洞に突き抜ける危険が圧倒的に低く、骨が足りなくても必要最小限の骨造成で治療できます。そのため、手術回数の削減、身体への負担の軽減、治療期間の短縮、治療費の抑制などにつながり、患者さんにとってメリットになります。
ショート云々の定義でなく、どの長さのインプラントを使うかは、患者さんの顎骨の質量や形態に合わせて選択すべきだと強調させて頂きます。
症例写真
当院で実際にショートインプラントを使って治療を行なった症例をご紹介しています。
詳細はこちらをご覧ください。
上部構造「ジルコニアセラミック」
インプラント治療では、埋め込んだインプラントに上部構造(人工歯)を装着して仕上げます。上部構造には、天然歯のような色調と質感を再現できる、審美性に優れたセラミック(陶材)を使いますが、そのなかでも「ジルコニア」(人工ダイヤモンド)を使ったセラミックを使っています。
ジルコニアセラミックは、セラミックのなかでもとくに強度に優れています。通常のセラミックの場合、噛んだときに大きな力がかかる奥歯に使うと割れてしまうリスクがありますが、ジルコニアセラミックであれば奥歯にも使うことができます。また、歯垢が付着しにくく長期に衛生的な口腔を維持しやすくなります。つまり、インプラント周囲炎、歯周病になりにくい特徴を持ちます。
また、金属が一切含まれていないので、金属が溶け出して歯肉との境目に黒ずみができたり、金属アレルギーを発症したりする心配がありません。
なお、上部構造だけでなくアバットメント(インプラントと上部構造の連結部分)もジルコニアにすることで、さらに美しく自然な仕上がりになります。